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このつまらない仕事をやめたらぼくらは本当に幸せになるのだろうか?(1)
「じゃぁ、納入止めましょうか!?」
営業マンはバイヤーに対して、こう吐き捨てた。
無理な納期、無理な数量。 しかも、デリバリーは営業マンの手持ちだった。
基盤用のヒートシンクだったため、持ってくるのは無理ではない。しかし、東京にたどり着いた品物をそのまま新幹線で関西まで持って来てくれた。
その営業マンのおかげで、バイヤー企業の生産はつながった。だが、とびきりの特急料金が見積りには加算されていた。
コストが通常の3倍だった。
「さすがに3倍はないだろう」と思いバイヤーはしぶしぶ交渉することにした。
最初は穏やかだった交渉も時間が経るにつれてヒートアップしてきた。
かかった金額を運送費を論理的に加算し、「この金額が妥当だ」というバイヤーに対して営業マンは憤った。
「そういう次元の話じゃないでしょ」と営業マンは譲らない。
しかし、それでも交渉を続けようとするバイヤーに対して営業マンはこう叫んだ。
「じゃぁ、次回から納入止めましょうか!?」
・・・・
そのバイヤーは私だった。
今日もどのくらいの似たケースが日本で繰り広げられているだろうか?
納期を間に合わせるのか、コストを取るのか?もちろん、この二者は相反する関係に必ずしもあるわけではないのだが、ごっちゃにして議論してしまうことがある。
いや、混同せざるをえないときがある。
緊急の納入をお願いすれば、お金はかかる。そりゃそうなのだ。でも、加算して払うカネもない。これまた本当なのだ。
営業マンが加算した金額が妥当かどうかは別として、追加の手間がかかるのは事実だ。
実費ではない「営業マンの手間」が大半にせよ、緊急運送費はたしかに営業マン企業に負担となっている。
また、バイヤーも「せっかく持ってきてくれたのだから、コストぐらいは・・・」と甘くなるときがある。それを私は悪いとは思わない。
私が逆の立場だったら、請求したくなるであろうからだ。
それに、それを払ってもよいと判断できれば、特に問題があるとも思えない。
しかし、である。
いつもいつも簡単に折り合いがつくときばかりではない。争いになるとき、気分がいいものではない。「あの営業マンだって、わざわざ持って来てくれたんだよな」そう感じてしまうと自分自身の中でも迷いが生じる。
多くのバイヤーもこのような場合、情状酌量すべきかどうかで苦悩している。