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会社の金だったら何をやってもいいのだろうか?(1)
「全然間違っているじゃないですかっ!!」
その女性バイヤーは、先輩に向かって声を上げた。
ある購入部品の全社会議のときのことだった。とある部品メーカーのことについて話していた。シェアはどれくらいか。売上は?そして強みはどこにあるのか?
そういうことを、その先輩バイヤーは話していた。
通常であれば「なるほどねぇ」と参加者からは流されるような話だった。
その先輩バイヤーがそのメーカーの製品に関して話しているときのことだった。
「このDSPは、あそこのデュアルオーディオに使われていて、いくらで購入していて・・・」 と話そうとしたときに止められた。
「そんな金額じゃないですよっ!全然間違っているじゃないですかっ!!」
「あ・・・」
その先輩バイヤーは絶句した。
そんな公の場で否定されると思っていなかったのだ。
しかも後輩の女性バイヤーから。そのバイヤーは正直「おいおい」と思った。
・・・・
そのバイヤーは私だった。
思えば、口に任せて厳密ではないことを喋っていたと思う。
しかし、私が「コストを間違っていた」といってもたかだか10円くらいの話だ。
その10円がズレていたとして、果たしてその議論に何か支障があるだろうか?
もちろん否--。
そう思っていた私の感覚はそののち崩れ去ることになる。
あとでその女性バイヤーが近づいてきて
「あのDSPを交渉したのは私だったんです」と言った。
「あ、そうだったんだ。意外に安いよね、アレ」と私は返答するのがやっとだった。
聞いてみるとどうやら、彼女はそのDSPを1円でもより下げようと勉強と交渉を幾度となく繰り返してきたのだという。
何度も何度も毅然とした態度でサプライヤーにあたり引き出した価格--それを、先輩バイヤーといえども高めに述べるのは「分かっていない」ということらしかった。