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ただの資料じゃねぇか、こんなもん(2)
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資料とは、報告する人の自信のなさに比例して批判される量も増えるようになっているから、私はその逆をやってみた。
ある程度の数字をつかんだら、その数字に全てを合わせて細かな数字を捏造してしまうのだ。
資料の作成時間はそれまでの何分の一になった。
そして、運良く(これは多くの組織でもそうなのだ、と後々知るようになるが)一回報告してしまった数値を後悔することは一度もなかった。
加えて、報告するときは「私の報告する数値に間違いは絶対にない」というスタンスで望めば、全く批判はなくなった。
結局、報告する数字などなんでもよかったのである。
報告上の数字は、上司の上司が安心するためだけに使われる、とまで書いたらさらに皮肉が過ぎるだろうか。
私が言っていることが矛盾しているように聞こえるかもしれない。
私は「購買の問題は、実際の購入額を把握していないことだ」と書いた後に「報告の数字など何でもいい」と書いた。
ここには説明の省略がある。
おそらく、必要なのは
(1)多額の量を購入している、と分かっているところの購入額はラフ計算でもよいが
(2)誰も気にしていないメーカーの購入額はシビアに計算する
という割りきりである。
(2)セルフサービス購買のように、購買・資材部門を通さずに社内の各部署が勝手に購入しているメーカーには意外な多量発注(と汚職)があり、(1)多量に購入していると分かっているところの数値をどれだけ細かく出しても次の購買戦略構築にはつながらない、という差異があるのだ。
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社内の支出分析を調査したときに、大取引先に目が行きがちになる。
しかし、本来の支出分析とはそれまで目をつけられていなかった影の領域の「盲点」を突くことにのみ価値がある。
大物取引先の購入額を「前期は購入額100億円だったが、今期は95億円しかない」などと議論してもどれだけ意味があるというのか。
むしろ、「これまで300万円の取引先が2000万円になっている」という議論の方が、真の問題を浮き彫りにしてくれる可能性がある。
それに、これまで誰も気にしていなかった支出先を明らかにすることができれば、新しい視点を組織に提供することができるだろう。
会社には多くのムダがある。
特に、製造業は販売製品の原価には厳しいが、その他の費用はザルなところが多い。
加えて、「重点管理部品」のコストにだけは厳しいくせに、その他多くの購入品のコストが何の管理もされていないときもある。
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これまで多くのバイヤーと話してきた。
すると、ときに「俺の担当の部品を下げろって言われても限界あるよなぁ」とか「俺の担当領域以外に、全然手付かずの領域があるんだよ」という発言が飛び出してくる。
バイヤーは常に「自分の領域だけコストが厳しい」と思いがちな人種ではあるが、その意見にも一理ある。
しかし、それであればこそ--。
その他、どれほどの領域でコストが管理されていないかを定量的に示すべきだ。
下らない数値合わせに奔走するのもよいが、会社の金庫番としての購買の役割としては、誰がやっても分かる領域に血まなこになるのではなく、誰もが気づかなかった問題をあぶりだすことによって社内にコスト意識を植えつける機能をもっていることを忘れてはいけない。
下らない数値合わせなど止めてしまえ。
代わりに、真の問題を明らかにせよ。
自分がせっかくコストダウンしている利益を食い物にしている真の悪玉を常に監視せよ。
その意識を持っていなければ購買の存在意義など、もはや私は信じることができない。
「バイヤーは出来レースの報告会をつぶせ!!」