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価格を下げる側の論理(1)
「そこのメーカーから買って来い!!」
ある製品が大赤字になったときのことだった。
緊急会議、という名目で営業部門から生産部門、設計部門、調達部門までが集められた。
そこで、「対策を考えよう」ということになった。
売り出してから赤字であることが判明するなど、愚にもつかない。しかし、法人相手に個別品をカスタマイズして売り出している企業であれば、さほど珍しくない。
「このままでは収益を圧迫する」と営業部門からは説明があった。その顔には、自分たちが責任を持っているという認識のかけらもなかった。
売り出したばかりの製品を劇的に改善する?
出席していたバイヤーは疑問に思った。
これから簡単に仕様変更などできぬ。生産効率改善といっても限界があるだろう。客先の売価を上げるわけにはいかぬ。
となると、残った選択肢は、購入品の単価を下げることである。
当然のごとく、会議の結論もそういうことになった。
ある設計者はこう言った。
「競合他社は、○○という系列メーカーから部品を購入している。そこはかなり安いらしい」と。
すると、会議はあらぬ方向に動き出した。
「購買力の差か!」「競合他社が利益が出ているのは、やっぱりメーカーをちゃんと抑え込んでいるんだよ」などと皆が言い始めた。
挙句の果てには、こういう「正式提案」を設計部門のお偉いさんから受けることになった。
「あの競合他社系の○○っていうメーカーから買ってきてよ!」
・・・・
そのバイヤーは私だった。
思えば、当時は不毛な会議ばかりであった。
ほぼ同じような内容の会議を3回以上繰り返す企業は辞めたほうが精神的に楽である。しかも、責められるとなると最悪な気分になる。
おそらく、今日も日本のどこかで、「他社の購買は進んでいるぞ!ウチの購買は力がない」とか「購買力がないからウチはダメなんだ」という言いがかりをふっかけられているバイヤーがたくさんいるだろう。
購買がたいしたことない、ということは他部門も同様にたいしたことはない、という当然の認識がそこにはない。単一企業内でそれほどレベルに差がつくはずはないからである。
「他社はそこから買っているから安いんだ」
「他社が持っているメーカーは、我々とレベルが違う!」
などという限りなく思いつきに近い発言がいつの間にか真実になってしまう。
他社が結局のところいくらで買っているかなど分かるはずもないのに、なぜだか「高く買っている自社、安く買っている競合他社」という図式が成立してしまう。
おそらく具体的なデータもないのにそう語る人は、頭が悪いか、狂人なのだろう、と今では正確に判断できる。