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文化ギャップと人間理解(2)
そのバイヤーは私だった。
はるか昔に中国に行ったとき。
夜の露店で買った服は一日でボタンが取れた。翌日、苦情を言いに行くと、そのオヤジは「当然だろ」と言った。
ビール瓶を四つ並べると、入っている量が全て異なった。
任天堂のファミコンそっくりのゲーム機があったが、インベーダーゲーム専門機だった。
CDを購入したら中古品だった。
などなど。良き思い出でいっぱいである。
しかし、現在は洋服縫製を世界から集め品質も向上し、電機メーカーはこぞって進出し、自動車メーカーからは第二のデトロイトと呼ばれる地域まである。
この変化は何なのか。多くの人から批判されつつ、巨大なる魅力を持ち人々を誘蛾灯のように惹き付けるこの国。
ある者は魅了され移住し、ある者はその制度の狭間で没落してゆく。
中国の商習慣については私より深い知識を持っておられる方がいるので深い解説は止めておく。
それにしても、確実に言えるのは、中国という国で安定調達できるということは、それだけでスキルということだ。
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顔は似ているが考え方は全く違う。
中国のサプライヤーと多少なりとも取引の経験のある私の偽らざる感想だ。
もちろん、紳士的な人々も多い。
しかし、その陰に隠れる犬も食わない種類の人間たちがいる。その人々との触れ合いは、一種のゲームである。しかも、知的興奮のない。
確実にいい経験なのでバイヤーはやってみることを勧める。
契約でガチガチに縛ればよい、という人もいる。しかし、私にはその考えに同調できない。
契約など、最後の最後にモメて法的手段に訴えざるを得なくなって初めて意味があるものだ。しかも、その契約が正とされるかなど分からない。
これまで契約が役に立った経験はない。稚拙な契約しか結べていないだろう、と言われればそれまでである。
唯一正しいと思ったアドバイスは、「たくさん買おうとするな。少しずつでもよいから長い期間調達せよ。その果てにしか信頼関係は築けぬ」というものと、「困ったら現場の人間に(工場作業員、という意味ではない)カネを渡すことも問題解決の一策だ」という身も蓋もないリアリスティックなものだった。
極小の文字に気をつけろ、とは誰も言ってくれなかったが。
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モノを販売するサプライヤー側は、ときとして全社一丸となった行動に出る。
それに対して多くの場合、バイヤーは一人のはずだ。しかも、そのバイヤーの背後にはそもそも中国調達に反対している社内勢力もあろう。
その中でバイヤーは孤立無援な闘いを挑まねばならぬときがある。
なんと、チャレンジングな状況だろうか。
絶望な瞬間もある。騙されることもある。苦しくなって全てをリセットしたいときもある。
しかし、その戦火を潜り抜けて勝ちをつかむこと。前後と背後にいる敵を説得しつつ、虚構を見透かして、自ら攻めに転じること。
こういうことがまさにバイヤーの生きた能力ではないかと思う。生きるは活きるとなり、周囲を啓蒙してゆく。
増値税還付の問題や、その他税法。意味不明の現地認定。
これほどまでに何かもがなく、何もかもがあるところは珍しい。世界で最も調達・購買が難しいところと言ってしまってどんな支障があるだろうか。
「バイヤーは中国を目指せ!」