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重課主義と個人主義(1)
「何を話しているんだ?」
そのバイヤーはそう思った。
ある会議に呼ばれたときのことだ。
サプライヤーが不良品を出してしまい客先からクレームがあった。
最初は品質保証部門と設計部門とでサプライヤーに対応していたが、どうしようもなくなったので、購買部門にお呼びがかかったというわけだ。
話の内容は、品質の補償の割合や代品納入義務発生の有無。そして費用の処理。
そのほとんどが既に基本契約書や覚書等で締結しているものばかりだった。
サプライヤーの営業マンも知ってか知らずか、疑問を一般論化し、堂々巡りを続けていた。
バイヤーは言ってみた。
「そんなことは、議論するまでもないじゃないですか」と。「今の議論は全て契約書で決まっている内容です」と言った後に説明を始めた。
こういうトラブル時にモメて物事が滞留しないようにするのが契約書の役目だからだ。
その会議が終った後に参加者はバイヤーに向かって「あなたが来てくれてよかったよ」と言った。
バイヤーは対応として「今後困ったら、私に相談してください。他のバイヤーが担当しているものでも構いません」と答えた。
そこからバイヤーは通常では相談されることのない内容まで相談を受けてゆくことになる。
・・・・
そのバイヤーは私だった。
「その他困ったときにどうすればよいか」、「契約を盾にとって相手を困らせる方法とは」
そんなことを自分で勉強しながら相手に答える。
繰り返しているうちに、部門内でおそらく一番詳しくなってしまった。
学ぶこともでき、相手から便りにもされる。そんな状況になってしまった。
そのとき私は一つの部門ではなく「環境」になった。
「困ったらあそこに相談しよう」ではなく、「こういうことが起きたらあそこに行けばよい」と自然に思ってくれるような「環境」になった。
例えばそれは、多くのIT企業にとってGoogleが単なる一企業や競争相手ではなく、日ごろ当たり前に使用している環境になってしまったことと同じである。
私はそこからも仕事を広げ続けた。
「契約や決め事に関わる困りごとではなくても、システムとか問合せ先を知りたいときでも相談してください」と周りに言ってみた(実際に言った。この「実際に言う」ということが何より大切である)。
すると、いつかしら自然に仕事が増えた。増えすぎた。
すると、それをこなそうと効率化を目指すようになった。
どうやれば1秒でも短縮化できるか。そんなことを自然に考えるようになった。