2.6%の会社がつぶれている現実をご存じだろうか。

2009年度版中小企業白書での会社開廃業率の推移をみると、資料上の最新データで2007年の廃業率が2.6%とある。バイヤーにとってもっとも避けなければならない状況である既存サプライヤーの倒産。しかし、100社中2.6社は統計的に見ても倒産して当然なのが現実の姿なのである。

過去一年の実績を思い返して、この割合を少ないと見るかどうか。意外に多いんだね~と思った方は、かなり幸せである。そして、そんな状況がただの偶然に過ぎないことを、いつの日か思い知ることになる。

昨年ある雑誌のインタビューを受けた。その最中にあるバイヤーと私の意見が真っ向からぶつかる場面があった。「アポなしでやって来たサプライヤーに会うか会わないか」という問題である。

その場には複数のバイヤーと、雑誌の編集者、ライターが一堂に会していた。あるバイヤーは「会わない」、私は「会う」とした。お互いの主張を披露したが、雑誌には、「会わない」との内容だけが掲載された。アポなしサプライヤーには会わない方が読者の共感を呼ぶのか。

雑誌の特集は営業担当者向けで、営業パーソンへのメッセージとして「調達・購買担当者と会うときは、事前にアポイントメントをとりましょう」ということなのだろう。これにはまったく異論がない。

実際のところは、来ていただいても、私の予定が埋まっていて時間が確保できないケースもある。従い、予定の確認をする意味で、事前にご一報いただけるのはありがたい。しかし、バイヤーとして時間の調整が可能にもかかわらず、アポなしとの理由だけで会わないというのはどうなのだろうか。

毎年確実に2.6%の会社が倒産している中で、もしかしたら自社にとって興味深い提案を抱えている可能性があるかもしれない。それもわざわざ来てくれたのである。自分の時間が調整可能であれば、会わないことが私にはもったいないと感じられてならないのである。

バイヤーは、所属する企業の戦略に沿った調達・購買活動を実践する。なかでも、サプライヤー戦略とは、バイヤーにとって必要不可欠なリソースであるサプライヤーをどのように活用していくかの根幹が明記されているはずだ。

以前のこの有料マガジンの記事でも、バイヤーとして一番避けなければならない状況の一つとは、サプライヤーの倒産であると書いた。それが2.6%の確率で起こることは、過去の統計が証明している。

そんなバイヤーにとって、もっとも忌々しい状況への対処法の第一歩は、まずサプライヤーと会うことではないだろうか。それも相手が会いたいと欲している。万が一、バイヤーとして恋い焦がれる程に求めるリソースを提供してくれるかもしれない、そうは考えられないだろうか。

格好良く「戦略的サプライヤーマネジメント」といっても、最初はサプライヤーとの面談から始まる。そんな高度なレベルでなくとも、2.6%の確率で倒産する可能性があるサプライヤーなのだ。事前にどの業種で倒産が発生するかどうかなど誰もわからない。

私の経験でも、倒産情報を一日早く知ることができ、初動を早めることができれば御の字である。一日早く情報を入手しても、緊急避難的な対処のみに有効で、恒久的に別のサプライヤーに切り替えるアクションに繋がることはない。

バイヤーとして、どれだけサプライヤーを知っているか。既存のサプライヤーでも、活用していないリソースをどの程度掌握しているか。取引の無いサプライヤーの持つ可能性をどれだけ理解しているか。そのような役立つ確証のない知識が、バイヤーの困った事態には一番有効なのである。

今、「受注開拓緊急支援事業」といった形で、行政機関(多くは都道府県レベル)が多くの商談会を開催している。この1,2月でも、私が知る限り機械・電子・電機関連で4回の商談会が全国各地で開催される。私はお話を頂いた場合は必ず出席する。

主催者は発注側企業の確保に苦労しているらしいが、私はそんな状況が不思議でならない。そして主催者が苦労して勧誘した発注側企業も、十数社に一社の割合で欠席(ほとんどドタキャン)している。そして私は感じるのだ、なんともったいないことをバイヤーはしているのか、と。

バイヤーを企業内で行う場合の大きな問題点の一つに、新しいサプライヤーを開拓せずとも仕事ができてしまうということが挙げられる。過去から現在まで事業を継続していれば、実績を重ねたサプライヤーが多数存在する。そのサプライヤーへ、社内の購入要求を割り振っていれば、なんとなくバイヤー然として仕事ができているように見える。

でも、バイヤーであれば誰彼の区別無く、自分が担当するサプライヤーの2.6%は確実に倒産するのである。50社担当していれば、1社はそうなるのだ。来るべき忌避すべき事態への備えは、戦略的サプライヤー戦略などといったものでなく、サプライヤーと会うことを厭わないことだ。

もし、どうしても都合がつかなければ、面談可能な時間を再設定する。面談して、自社のニーズと合わなければ、その旨を伝える。もしそんなバイヤー対応で、サプライヤーが何かを学び、次なる顧客からの受注に結びつくことがあったらすばらしく、バイヤーが対応したことも決して無駄ではなくなる。

そもそも営業とは千三つだ。営業される側であるバイヤーの我々も、多くの場合は997つになることを認識すべきである。いきなり3つにたどり着き、自社にとって有益なサプライヤーとめぐり合うことなど奇跡なのだ。バイヤーは、早い段階でその奇跡に巡り会う幸運を得るためにも、997つになる事を受け入れる事が重要なのだ。

毎年指して内容の変わらない戦略的サプライヤーマネジメントといった絵空事を語るのであれば、一社でも多くのサプライヤーと会い、話を聞く機会を持つのが先、サプライヤー戦略はその先にあるものなのだ。そもそも地道な活動無しに、利益を獲得する戦略など成立しえないのである。


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